霊泉寺温泉(2) 遊楽・館内編
宿を出ると、まずは道なりに温泉街の奥に行ってみようと思い立つ。温泉街といっても活気ある観光地にはほど遠く、――というのは最初に述べた通りだが、それにしても人の姿がない。まだ日陰に雪の残る道をゆっくりと歩く。

楽天トラベルで霊泉寺温泉を見ると、今回泊まった「遊楽」のほか三つの宿がある。「遊楽」から道の奥を眺めるとまず眼に顕ったのが「中屋旅館」の看板で、その隣には「清水屋旅館」の名前が見える。ただ清水屋旅館の建物を覗いても、宿を開けているようすはない。後日調べてみたところ、案の定、廃業したことを知る。
看板を残しながら閉めてしまった宿は哀しい。だがこれからはこうした廃業ないしは閉業する宿も増えていくのだろう。いわきの玉山温泉「石屋旅館」の女将も、ここ「遊楽」と同様、ひとりで切り盛りをし、「あと2、3年続けることができれば」と話していたことを思い出す。

「中屋旅館」は建物の規模から推すと、「遊楽」よりは少し大きい宿に見える。楽天トラベルのサイトを見ると、武者小路実篤も逗留したようで、彼が名をつけた「笹舟の湯」があるという。だがこれも利用方法がよく判らない。「遊楽」のように自由に札を貸し切りにして利用することができるのか、それとも時間制なのか、そもそも無料で入ることができるのか。このあたりの説明をひとつ加えるだけでも興味が湧いてくるのだが。

そしてこれだけ客足が落ち着いているのであれば、男女別の大浴場をそのまま貸し切りにしてしてもいいのではないか、とも思う。湯河原温泉の「伊藤屋」は四つある浴室をすべて貸し切りにして、GoToトラベル以降も多くの客が訪れている。

向かいにある「和泉屋」は一番の大きさで、楽天トラベルを見ても料金も一番高額となっている。写真を見ると料理のボリュームも相当なもので、居心地は良さそうではあるものの、それにしては「お客様の声」の投稿数がたったの15というのは心許ない。
今回宿泊した「遊楽」の「お客様の声」を見ると、安宿ながらその魅力を十二分にわかっている客から愛されているようすがありありと伝わってくる。これから求められるのは温泉通がいくども通いたくなる小体な宿だろうと考える自分としては、長く続いてほしい宿ではある。

もう一軒、「和泉屋」の向こうにあるのが「松屋旅館」で、「遊楽」とどちらにしようかと悩んだ宿でもあった。日帰り入浴できます、と立ち寄り湯歓迎の札が掲げられ、なかから女将さんと思しき女性が外を覗いているのが眼に入った。食事の写真をネットで見つけのだが、悪くない。ただここも自由に入れる貸し切り風呂がある「らしい」のだが詳細は不明で、このあたりがもう少し判れば、「遊楽」との泉質を較べてみる気にもなるのだが。

「松屋旅館」の隣が共同浴場で、「遊楽」の女将さんが「赤いポストのある建物」と話していたものだろう。入口で男女が別れてい、中のようすは判らない。数年前、別所温泉の「玉屋旅館」に泊まったときに共同浴場に入ったが、地元民たちの憩いの場になっていたことを考えると、この時期に余所者が気軽に入るのは躊躇われた。

さらに奥に進むと橋があり、その向こうには除雪のされていない曲がり道が見えるだけだったので引き返す。




「遊楽」まで戻ると、霊泉寺に入る。人気はなく、しんかんとした境内には雪が積もり、本堂まで行くことはできなかった。
(続く)
霊泉寺温泉(4) 遊楽・夕朝食編
0 comments on “[2022-02-18]霊泉寺温泉(3) 遊楽・温泉街編”